博士後期課程

脳型情報処理機構学分野

この分野は、認知や学習、行動などの脳機能がどのような生理学的・解剖学的システムで実現されているかを理解するために、さまざまなテーマに関して、実験的および理論的研究を行っています。

最近の成果では、脳活動などに重要な様々の膜タンパク質の3次元構造を決定しました。世界的な潮流となってきている極低温電顕による単粒子構造解析法の開発に長年取り組み、個々のタンパク質粒子を撮影し情報学的に解析することで、電圧感受性Naチャネル[Fig:1]、TRPC3・ORAIチャネルやIP3受容体[Fig:2]、アルツハイマーの原因β-amyloid を生産するγ–secretase、老化や癌防止に重要な酸化ストレスセンサーKeap1の3次元構造を世界に先駆け決定しました。

さらに、細胞内でタンパク質の複合体形成や機能を理解するために、水中で直接細胞・組織を高分解能観察できる電顕ASEM を開発しました。これにより、微小シナプスやその内部も観察できるようになり、分子と細胞・組織をつなぐ総合的な理解を目指しています[Fig:3]。

また、大脳辺縁系神経回路の研究では、膜電位イメージング手法によって、嗅内皮質と扁桃体皮質を結ぶ多シナプス性の神経経路の存在を見出しました。海馬系と扁桃体系を結ぶこの神経経路は、情動と記憶の相互作用の仕組みを理解する上で重要な意味を持つと考えています。Fig:4は、齧歯類単離脳において、嗅覚刺激により梨状皮質に惹起された神経興奮が、2つの経路により扁桃体皮質へ送られ統合される様子を捉えた映像を示しています。

(独)産業技術総合研究所との連携で行っている研究は、

  1. 電子顕微鏡(電顕)単粒子解析法を開発することによって、神経細胞膜チャネル・受容体など生理機能に重要なタンパク質の構造を解析し、脳の柔軟さを制御する分子機構の研究
  2. 水中で細胞を高分解能観察できる大気圧走査電顕(ASEM)を開発し、タンパク質の神経細胞内での複合体形成や機能の解明
  3. 脳機能イメージングによる大脳皮質神経回路の機能構造解析
  4. 脳損傷後の機能代償メカニズムに関する研究
  5. 記憶ー視覚情報ー報酬の連合に関わる情報処理機構の解明
  6. 視覚ー運動変換メカニズムの解明

などです。